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ドラムスティックの拍子に合わせて頭から曲に入る。
陸が叩くリズミカルなドラムにカイのエレキギター、陽介のベースが鳴り響く。
バラつきのない音で出来たイントロを終えると、そこに檜の歌声がのる。
Aメロを歌い上げ、サビに入ろうとした所で陸が待ったをかけた。
バラバラとそれぞれの音が止むのを待ってから口を開く。
「…あのさ、サビに入る前ンとこ、もっとアップテンポきかしてクレッシェンドした方がいいんじゃない?」
「なるほど。じゃあタタタ.ターン.…みたいな?」
「そうそう、そんな感じ」
陸とカイがあれこれ試行錯誤を重ねていると、檜が口を挟んだ。
「なぁ、ちょっと休もうぜ~? 俺のど渇いた」
団扇代わりに手をパタパタさせ、あんぐりと開いた口から犬みたいに舌を出す。
「はは、せやな。ぶっ通しやったし休憩しよか?」
隣に立つ陽介が、ベースを肩から外しながら言った。
「じゃあ俺、何か飲み物買って来るよ」
「お…! カイ、サンキュー。俺缶コーヒーな!」
「俺も缶コーヒー」
「あ、俺は」
「ヒノキはフォンタグレープでしょ?」
カイにズバリと言い当てられる。
檜は中途半端に挙げた手を止め、
「先に言うなよな」
と笑った。
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