3.物欲

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近所のコンビニから戻ったカイに飲み物を貰い、それぞれ床やアンプの上に腰を下ろす。 「なぁ、さっきからヒノは何を一生懸命見てるん?」 ジュース片手に雑誌のページを捲る檜に、陽介が声を掛けた。 飲み終わった缶を脇に置き、そのまま隣に座る。 「…これさ、この中に載ってる新しいエレキ欲しいなと思って」 「え、今のやつもうあかんくなったん?」 「いや、そうじゃないけど…性能良くてデザインカッコいいのが欲しいじゃん、やっぱ」 「ふ~ん…」 言いながら尚も雑誌とにらめっこをする。 檜たちの組むバンド、‘FAVORITE’は4人で結成している。 ボーカル兼ギターの檜、サブボーカル兼ギター兼キーボードのカイ、ベースの陽介、ドラムの陸。 キーボードが入る曲になるとカイがそれを弾き、ギターは檜の担当になる。 センターで目立つ事を気にして、檜は新しいギターを買い換えたいと思っていた。 「ちなみに檜が欲しいのはいくらすんの?」 向かいに座っていた陸がヒョイと雑誌を覗き込む。 檜がお目当ての楽器を指差すと陸はえ、と顔をしかめた。 「11万8千…! たっか…っ!! テレビ買えんじゃん?」 「うん…今度売り出す限定モデルだからどうしてもな~」 数量50台という見出しに頭を抱える檜を見て、陽介が言う。 「こういうのはピンきりやから上見りゃキリないで?」 「うーん…」 雑誌から顔を上げ、思わずため息がもれた。
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