3.物欲

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「カイ…、どうやら今日はカレーらしいぞ?」 「アハハっ。何買って来いって?」 黙ったまま携帯を渡す。 「…ジャガイモと人参と牛ブロック、カレーのルゥ、か。 殆どじゃん、何でカレーにしようと思ったんだろ?」 「さぁな。 ついでに鶏肉とチーズも買っとこう。トッピングは必須」 言いながらクルリと踵を返し、2人は近くのスーパーへと向かった。  * スーパーで頼まれた食材を探しながら、檜は先程の事を思い返していた。 カイに桜庭先生の事を訊かれた時、どう答えたら良いものかと正直躊躇った。 あれ以来数回メールをしてみたけれど、返ってくる答えは適当なものばかりだった。 例えば浮かない顔をしていた先生に 【元気無かったみたいだけど大丈夫?】 と送ると、 【そう? 別に大丈夫だけど】 といった感じに。 てんで相手にされていないのは‘年下’だからか‘生徒’だからか。 それとも別の理由からか…。 女性相手にこんなに手応えを感じ無いのは、生まれて初めてだった。 カイと2人でレジに並ぼうとした所で、ふと足が止まる。 「ヒノキ? どうした?」 ある一点を見つめたまま微動だにしない檜を見て、カイも同じく目を向ける。 「あれ…。先生だ」 そこには調味料棚の前に、買い物カートを止めて佇む、幸子の姿があった。
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