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「カイ…、どうやら今日はカレーらしいぞ?」
「アハハっ。何買って来いって?」
黙ったまま携帯を渡す。
「…ジャガイモと人参と牛ブロック、カレーのルゥ、か。
殆どじゃん、何でカレーにしようと思ったんだろ?」
「さぁな。
ついでに鶏肉とチーズも買っとこう。トッピングは必須」
言いながらクルリと踵を返し、2人は近くのスーパーへと向かった。
*
スーパーで頼まれた食材を探しながら、檜は先程の事を思い返していた。
カイに桜庭先生の事を訊かれた時、どう答えたら良いものかと正直躊躇った。
あれ以来数回メールをしてみたけれど、返ってくる答えは適当なものばかりだった。
例えば浮かない顔をしていた先生に
【元気無かったみたいだけど大丈夫?】
と送ると、
【そう? 別に大丈夫だけど】
といった感じに。
てんで相手にされていないのは‘年下’だからか‘生徒’だからか。
それとも別の理由からか…。
女性相手にこんなに手応えを感じ無いのは、生まれて初めてだった。
カイと2人でレジに並ぼうとした所で、ふと足が止まる。
「ヒノキ? どうした?」
ある一点を見つめたまま微動だにしない檜を見て、カイも同じく目を向ける。
「あれ…。先生だ」
そこには調味料棚の前に、買い物カートを止めて佇む、幸子の姿があった。
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