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「見るなって言われると見たくなっちゃうんだよね~?」
「あ、ちょっと、秋月くん!」
幸子を押しのけ中を物色する。
「へ~、先生んちも今日カレー? しかもカレー粉で作るんだ?」
「…ったく」
先程かごに入れたカレースパイスを手に取る。
その様を見て幸子は呆れて苦笑した。
「今日は和風カレーにしようと思って。それにルゥだと作り過ぎちゃうの」
「…。先生1人暮らし、なんだ?」
「そうよ?」
「へ~。…あ、」
手に持ったスパイスを再びかごに入れた所で、檜の表情が一瞬、固まった。
「何よ? あ、って」
疑問を浮かべ、幸子は檜の視線の先を目で追った。
「…っ!!」
瞬時に状況を把握し、幸子の顔は真っ赤になる。
とっさにかごからそれを抜き取り、後ろ手に隠す。
「あ、いや。えっと…なんかごめん」
幸子の反応を見て、檜は頭を掻いた。
後ろ手に隠した生理用品を、ぎゅっと握り締めながら、どうにか話題を変えようと幸子は目を泳がせた。
「あ、秋月くん…! 前にもそんなの持ってたわね!?」
檜が肩に掛けたギターケースを慌てて指差した。
「え、ああ…。エレキ?」
「…エレキって…、なに?」
「エレキギター。俺、音楽やるから」
「そうなの?」
「うん。カイと一緒にバンド組んでてさ。
あ、カイって随分前に渡り廊下で会った奴だけど」
幸子は口角を上げ、ニコリと笑った。
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