3.物欲

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「見るなって言われると見たくなっちゃうんだよね~?」 「あ、ちょっと、秋月くん!」 幸子を押しのけ中を物色する。 「へ~、先生んちも今日カレー? しかもカレー粉で作るんだ?」 「…ったく」 先程かごに入れたカレースパイスを手に取る。 その様を見て幸子は呆れて苦笑した。 「今日は和風カレーにしようと思って。それにルゥだと作り過ぎちゃうの」 「…。先生1人暮らし、なんだ?」 「そうよ?」 「へ~。…あ、」 手に持ったスパイスを再びかごに入れた所で、檜の表情が一瞬、固まった。 「何よ? あ、って」 疑問を浮かべ、幸子は檜の視線の先を目で追った。 「…っ!!」 瞬時に状況を把握し、幸子の顔は真っ赤になる。 とっさにかごからそれを抜き取り、後ろ手に隠す。 「あ、いや。えっと…なんかごめん」 幸子の反応を見て、檜は頭を掻いた。 後ろ手に隠した生理用品を、ぎゅっと握り締めながら、どうにか話題を変えようと幸子は目を泳がせた。 「あ、秋月くん…! 前にもそんなの持ってたわね!?」 檜が肩に掛けたギターケースを慌てて指差した。 「え、ああ…。エレキ?」 「…エレキって…、なに?」 「エレキギター。俺、音楽やるから」 「そうなの?」 「うん。カイと一緒にバンド組んでてさ。 あ、カイって随分前に渡り廊下で会った奴だけど」 幸子は口角を上げ、ニコリと笑った。
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