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「ひ~のきっ! 何見てんの?」
月曜の休み時間。
教室で雑誌を広げていると声を掛けられた。
「…ナナ」
愛嬌たっぷりに微笑みながら、奈々が檜の真向かいに座る。
檜は一度上げた顔を再び雑誌に向けた。
ヒョイとそれを覗き込み
「なぁに? 音楽雑誌…?」
と奈々は甘い声を出した。
「うん…。ちょっと、欲しいギターがあって…」
目を落としたまま、顔も上げずに答える。
別方向から誰かの視線を感じたが、察しがつくので無視をする。
「ふぅん…。それ幾らすんの? 高い…?」
「約12万…」
「うわぁ…」
奈々は眉を下げ、口元に手をやる。
「ねねっ…、奈々それ協力したげよっか…?」
ズイと顔を寄せ声をひそませる。
「いいよ、別に…。自分で何とかするし」
檜は無感動な声で言った。
その言い方が気に入らないのか、奈々はプクッと頬を膨らませた。
「檜さぁ…」
「うん…」
「最近奈々に冷たくなったよね…」
そこでツイと目を上げる。
「別にそんなつもりはないけど?」
表情を変えず真顔で答えると、奈々はキュッと唇を噛んだ。
「だって…、奈々とあんまり…。シてくれなくなったじゃん」
「ナナ…」
眉を寄せ、困った様にため息をつく。
「もう、いい…」
檜から目を逸らし、奈々は静かに席を立った。
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