3.物欲

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 * 「ひ~のきっ! 何見てんの?」 月曜の休み時間。 教室で雑誌を広げていると声を掛けられた。 「…ナナ」 愛嬌たっぷりに微笑みながら、奈々が檜の真向かいに座る。 檜は一度上げた顔を再び雑誌に向けた。 ヒョイとそれを覗き込み 「なぁに? 音楽雑誌…?」 と奈々は甘い声を出した。 「うん…。ちょっと、欲しいギターがあって…」 目を落としたまま、顔も上げずに答える。 別方向から誰かの視線を感じたが、察しがつくので無視をする。 「ふぅん…。それ幾らすんの? 高い…?」 「約12万…」 「うわぁ…」 奈々は眉を下げ、口元に手をやる。 「ねねっ…、奈々それ協力したげよっか…?」 ズイと顔を寄せ声をひそませる。 「いいよ、別に…。自分で何とかするし」 檜は無感動な声で言った。 その言い方が気に入らないのか、奈々はプクッと頬を膨らませた。 「檜さぁ…」 「うん…」 「最近奈々に冷たくなったよね…」 そこでツイと目を上げる。 「別にそんなつもりはないけど?」 表情を変えず真顔で答えると、奈々はキュッと唇を噛んだ。 「だって…、奈々とあんまり…。シてくれなくなったじゃん」 「ナナ…」 眉を寄せ、困った様にため息をつく。 「もう、いい…」 檜から目を逸らし、奈々は静かに席を立った。
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