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教室を出て行く奈々の姿をぼんやりと見ていた。
奈々の言っている事は当たってる。
この所、奈々の誘いが有ってもその殆どを断っていたからだ。
自分のせいで奈々が腹を立てたというのに、檜はどこか他人事だった。
パタンと雑誌を閉じ、先ほど感じた視線の先をチラッと横目で見やる。
やっぱり内田か、と短く息を吐いた。
力無く廊下へ出て行った奈々を心配してか、内田は彼女を追う様に、教室から出て行った。
(…特別じゃないんだよな)
檜は頬杖をつき、窓いっぱいに広がる灰色の空に目を向けた。
奈々に対して酷い事をしているという自覚はあった。
ずっと曖昧な態度を取り続けて今更突き放すのだから当然そうなる。
本当は奈々の気持ちを受け入れられないと思ったあの時、そうするべきだったのだ。
全ては後の祭り。
けれど、奈々との関係を続けていく内に、いつか奈々が特別になるんじゃないかとも思っていた。
可愛いと感じるのだから、身体を繋ぐ内にそうなるかもしれない、と。
身勝手な考え方に我ながら辟易してしまう。
黒板に視点を移し、黄色いマグネットで貼られた紙を見つめた。
来月はキャンプだ。
(めんどくせ…)
檜は幾度目かのため息を吐き出した。
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