3.物欲

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 * 「ナナ…!」 廊下へ出て行った奈々を内田が呼び止めた。 奈々は無表情で振り返る。 「どうした…? 元気ないじゃん」 「…ウッチー。見てたの?」 「え…?」 唐突な問いに狼狽える。 無言で見つめてくる奈々の気迫に負け、内田は眉を下げて頷いた。 「…ごめん。檜と、喧嘩でもしたか?」 「そんなんじゃない…」 どこを見る訳でもなく、ただぼんやりと宙を見つめる奈々を見て、内田は「そっか…」と呟いた。 「ねぇ、ウッチー」 「うん…?」 「最近、檜が冷たいの…奈々の事、嫌いになったのかな?」 「……。 そんな事…、ないと思うけど? ほら、あいつ。気分屋なとこあるし」 沈んだ奈々を元気づけようと、内田は努めて明るい声を出した。 しかしながら奈々には響かないのか、表情を変えず適当に相槌をうつだけだ。 内田は意を決してこう訊いてみた。 「ナナさ…、檜とは友達…なんだよな?」 「…え?」 奈々は眉を寄せ、幾らかの動揺を見せた。 「…いや。俺はてっきり付き合ってるもんだと思ってたんだけどさ…」 「…けど?」 「あ…、いや。 檜が違うって言ってたから」 内田が言い終わる前に奈々の視線は足元へと下がった。
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