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「ナナ…!」
廊下へ出て行った奈々を内田が呼び止めた。
奈々は無表情で振り返る。
「どうした…? 元気ないじゃん」
「…ウッチー。見てたの?」
「え…?」
唐突な問いに狼狽える。
無言で見つめてくる奈々の気迫に負け、内田は眉を下げて頷いた。
「…ごめん。檜と、喧嘩でもしたか?」
「そんなんじゃない…」
どこを見る訳でもなく、ただぼんやりと宙を見つめる奈々を見て、内田は「そっか…」と呟いた。
「ねぇ、ウッチー」
「うん…?」
「最近、檜が冷たいの…奈々の事、嫌いになったのかな?」
「……。
そんな事…、ないと思うけど?
ほら、あいつ。気分屋なとこあるし」
沈んだ奈々を元気づけようと、内田は努めて明るい声を出した。
しかしながら奈々には響かないのか、表情を変えず適当に相槌をうつだけだ。
内田は意を決してこう訊いてみた。
「ナナさ…、檜とは友達…なんだよな?」
「…え?」
奈々は眉を寄せ、幾らかの動揺を見せた。
「…いや。俺はてっきり付き合ってるもんだと思ってたんだけどさ…」
「…けど?」
「あ…、いや。
檜が違うって言ってたから」
内田が言い終わる前に奈々の視線は足元へと下がった。
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