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「君いくつ? いつもこんなことしてるの? ちょっと飲んでるみたいだけど、何かやなことでもあった? だからって危ないでしょ、もし変な男だったらどうすんの。やり逃げで済めばまだいいけど、写真でも撮られて流されたりとか、脅されたり付き纏われたりとかさあ。どんな犯罪に巻き込まれても文句言えないよ、ちゃんと分かってる?」
「――ここまで来といて説教なの? っていうか、あなたも既に結構『変な男』なんだけど」
いきなり始まった質問攻めにたじろいで、それでもなんとか反論すると男は「確かに!」と笑った。
空気が緩む。
私のささくれ立った気持ちも、少しだけ和む。
けど、やっぱり――男が笑うと、どうしてもあの人を彷彿とさせた。
ミニ冷蔵庫には一応、ペットボトルのお茶と缶ビールが準備されていた。
中身を確認した男に「飲みたい」と言ったにも関わらずそこはスルーされて、備え付けのポットで湯を沸かした彼がコーヒーを淹れてくれる。
甲斐甲斐しく動き回る背中をぼーっと眺めながら、さすがにおかしな復讐心はどこかに消えてなくなったのを自覚していた。
なんなんだろうこの男、本当に。
「ねえ。ヤる気もないのに、なんでここまで付き合ってくれてんの」
温かいコーヒーを受け取って一口啜ってから、その疑問を投げつけた。
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