YA DO RI GI

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「それ、必要……?」 えらく気まずそうに、いや言いにくそうにか。 十数秒口ごもった後に、男は白状する。 「似てるんだよ君、初恋の女に」 「ぶ……ッ」 危うく吹き出しそうになったコーヒー。 慌てて口元を押さえた。 「あんた、一体いくつよ!?」 この奇妙なシチュエーションで、初恋なんて単語をいい年した男の口から聞くとはさすがに予想外だ。 「キモッ! ねちっこくいつまでも初恋引きずってるからその年で独り身なんじゃないの!?」 「や、別に引きずってるわけじゃ……つーか傷付くな。俺って君から見たらオッサンなのか。うわマジか。もうキモいとか言われる歳なのか……」 男の言い訳は、途中からぶつぶつと独り言に変わった。 実年齢は知らないけど40代なら誰から見てもオッサンだと思うが、どうやらそれを受け入れたくないようだ。 あれ? てか、初恋って……。 「幼稚園の先生、とかだったわけ? ありがちー」 私と似てるってことは、初恋の年齢を考えると結構な年上じゃないのか。 まさか初恋が20代後半、とかだったわけあるまい。 むしろそれで未だ引きずってるとしたら、本気でキモい。
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