YA DO RI GI

12/23
前へ
/27ページ
次へ
また、えらく間を置いてから男は言った。 「――おばさん」 ……はあ? 「誰がオバサンよ!! こっちはまだギリ20代よ!!」 「え、ちょ! 君のことじゃないって。しかも、その『オバサン』じゃない!」 頭の中で何度か反芻して、ようやくその言葉の意味に辿り着く。 つまりおばさんと言うのは――、 「え、親戚のおばさん……ってこと? それは、うわぁー……」 ますますキモい、という最後はなんとか飲み込んだ。 だけど引きつった顔は隠せず、「だから話したくなかったんだ」と男は肩を落とした。 「若かったんだよ」 「え、マジ言ってる? まさか手出したの?」 「違うその『若い』じゃなくて、相手が」 どうやら、一般的な『おばさん』と『甥っ子』の関係よりも歳が近いのだと言いたいらしい。 「手ぇ出すとかはないよさすがに。って言うか、そういうこと考えるようになる前に、彼女とは会えなくなった」 話したくないと言ったクセに、男はぽつりぽつりと昔話を始めた。 「君と同じくらいだった、本当に似てる。俺は中学にあがったばっかりで、綺麗なお姉さんって感じだった」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加