19人が本棚に入れています
本棚に追加
「へーえ、そう」
だから何?
別に、彼が『おばさん』で自慰をしていようがしていまいが、どっちだっていい。
ただ貶めるためだけに吐いた言葉なのだから。
夫婦の破局について、男は否定できなかった。
結局、見せかけの偶像を崇めていただけであることに変わりはない。
彼が言うような輝かしく愛に溢れた家族ではなかったんだから。
「君は全然分かってない。愛は確かにあそこにあったよ、少なくともあの時は」
「少なくともあの時は、ね……。そして無くなった。壊れて消えた。シャボン玉みたいに?」
言ってる内に可笑しくなって、嗤いが零れた。
「そんなモノを軽々しく愛だなんて、よく言えるわね」
男はしばらく無言で、ただ目を逸らさずにこちらを見返してきた。
寂れかけたビジネスホテルの部屋の明かりは薄暗くて、瞳の奥までは見えない。
沈黙――長い、ため息。
それから男は静かに立ち上がって窓の傍まで行き、カーテンを開けて外を眺め、しばらく経ってからまた静かに元の場所へ戻った。
「今日はクリスマスイブだ。12月24日は――」
「……は?」
最初のコメントを投稿しよう!