YA DO RI GI

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「へーえ、そう」 だから何? 別に、彼が『おばさん』で自慰をしていようがしていまいが、どっちだっていい。 ただ貶めるためだけに吐いた言葉なのだから。 夫婦の破局について、男は否定できなかった。 結局、見せかけの偶像を崇めていただけであることに変わりはない。 彼が言うような輝かしく愛に溢れた家族ではなかったんだから。 「君は全然分かってない。愛は確かにあそこにあったよ、少なくともあの時は」 「少なくともあの時は、ね……。そして無くなった。壊れて消えた。シャボン玉みたいに?」 言ってる内に可笑しくなって、嗤いが零れた。 「そんなモノを軽々しく愛だなんて、よく言えるわね」 男はしばらく無言で、ただ目を逸らさずにこちらを見返してきた。 寂れかけたビジネスホテルの部屋の明かりは薄暗くて、瞳の奥までは見えない。 沈黙――長い、ため息。 それから男は静かに立ち上がって窓の傍まで行き、カーテンを開けて外を眺め、しばらく経ってからまた静かに元の場所へ戻った。 「今日はクリスマスイブだ。12月24日は――」 「……は?」
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