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「ああそうだ、君の言う通り俺はおじさんには今でもたまに会うよ。おじさんは別の女性と再婚した。こどももいる、俺の新しい従弟だ。だからなんだ? だから前の家族との間に愛がなかった? 全部見せかけの虚像だった?」
喋り続けるこの男は、逆ギレでもしたんだろうか。
変なスイッチでも押しただろうか。
口を挟む隙がなかった。
疑問形で問いかけてきているのに、明確な答えが彼の中にあって、それに反することを私が言うのを許す気はないようだった。
「新しい従弟がだんだん大きくなって、クリスマスケーキが戦隊キャラもののデコレーションホールじゃなくなってから気が付いたよ。ケーキは毎年、1人分多い」
息継ぎもせずに一気に喋った彼は、ようやくそこで、苛立ちを紛らわせるかのように大きな深呼吸を入れた。
――『この意味が分かるか?』
無言の、射抜くような視線が問いかけてくる。
今日はクリスマスイブだ、12月24日は……。
「30年前の今日、おじさんは彼女にプロポーズした。ヤドリギの下でだ。そしてその晩、彼女に天使が宿った」
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