YA DO RI GI

17/23
前へ
/27ページ
次へ
「ああそうだ、君の言う通り俺はおじさんには今でもたまに会うよ。おじさんは別の女性と再婚した。こどももいる、俺の新しい従弟だ。だからなんだ? だから前の家族との間に愛がなかった? 全部見せかけの虚像だった?」 喋り続けるこの男は、逆ギレでもしたんだろうか。 変なスイッチでも押しただろうか。 口を挟む隙がなかった。 疑問形で問いかけてきているのに、明確な答えが彼の中にあって、それに反することを私が言うのを許す気はないようだった。 「新しい従弟がだんだん大きくなって、クリスマスケーキが戦隊キャラもののデコレーションホールじゃなくなってから気が付いたよ。ケーキは毎年、1人分多い」 息継ぎもせずに一気に喋った彼は、ようやくそこで、苛立ちを紛らわせるかのように大きな深呼吸を入れた。 ――『この意味が分かるか?』 無言の、射抜くような視線が問いかけてくる。 今日はクリスマスイブだ、12月24日は……。 「30年前の今日、おじさんは彼女にプロポーズした。ヤドリギの下でだ。そしてその晩、彼女に天使が宿った」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加