19人が本棚に入れています
本棚に追加
ヤドリギの下で、一度は私を抱いた男が別の女とキスをした。
面白くなかったのは、それを見せつけられたからでも、純が一度も私を見なかったからでもない。
ただ羨ましかった。
望まれて祝福されて、これから生まれてくる彼女のお腹の子が。
自分は本当に生まれて来て良かったのかと。
いない方が。
そう思っているのは、私だけではないんじゃないかと。
私を捨て、離れて行った父にとって。
私を連れ、重荷だったろう母にとって。
自分のこどもを置いて出てきた、新しい父にとっても。
――いらない子ども、だったんじゃないかと。
ずっと、そう思って来たから。
いらなくない?
必要?
愛していた?
本当は分かっていた。
親を、憎んだなんて嘘だ。
憎みたかった、憎めれば楽だった。
記憶の中のお父さんは、いつだって笑っていた。
幸せだった。
愛されていた。
私はちゃんと望まれて、祝福されて生まれてきた。
最初のコメントを投稿しよう!