YA DO RI GI

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ヤドリギの下で、一度は私を抱いた男が別の女とキスをした。 面白くなかったのは、それを見せつけられたからでも、純が一度も私を見なかったからでもない。 ただ羨ましかった。 望まれて祝福されて、これから生まれてくる彼女のお腹の子が。 自分は本当に生まれて来て良かったのかと。 いない方が。 そう思っているのは、私だけではないんじゃないかと。 私を捨て、離れて行った父にとって。 私を連れ、重荷だったろう母にとって。 自分のこどもを置いて出てきた、新しい父にとっても。 ――いらない子ども、だったんじゃないかと。 ずっと、そう思って来たから。 いらなくない? 必要? 愛していた? 本当は分かっていた。 親を、憎んだなんて嘘だ。 憎みたかった、憎めれば楽だった。 記憶の中のお父さんは、いつだって笑っていた。 幸せだった。 愛されていた。 私はちゃんと望まれて、祝福されて生まれてきた。
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