YA DO RI GI

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ヤドリギの下で、女がはにかんでいた。 普段そういうことを人前でする女ではなかった。 周りにはやし立てられて、男はおずおずと前に出るとそっと彼女の頬に触れた。 誰もがその先を待っていた。 ヤドリギの下で、2人がキスを交わすのを。 女はにこりと笑って、それから小声で言った。 「ねえ……喜んでくれる?」 頬にかかった男の手を取り、彼女はその手をそっと自分の腹へいざなった。 その行動の意味に気が付いた周囲はざわめき、それからじっと2人の動向を見守った。 男は目を見開いて固まり、一瞬の空白の後、優しく女を抱きしめる。 それから長く熱い口づけを交わした後に、彼にしては珍しくはっきりとした口調で、周りに宣言するようにこう言った。 「結婚しよう」 わっと歓声が沸いた。 あちこちから祝福の声がかかり、女は涙を流して喜んだ。 その肩を抱く男はどこか恥ずかしそうにしながら、それでも浮かれているのが誰の目にも明らかだ。 歓びが、祝福が、幸せが、その空間には溢れていた。 ――近い未来妻となる女の隣に寄り添って立つ男が、一瞬たりともこちらを見ることはなかった。
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