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「今年二度目の誕生日おめでとう、杏樹」
「……いつから気付いてたの?」
「さあ、どうだろ。確信したのは途中からだけどね。会った瞬間にもしかしてとは思ったよ。言ったろ? おじさんとは今でも会ってるんだ。彼は君がこの街にいることを知ってるし、未だに気にかけてるよ。だから俺も知ってたし、いつか偶然会うこともあるかもとは思ってた」
そっちこそ、と、聖人が尋ねた。
そりゃ、回想話に自分の名前が出てくれば嫌でも気が付く。
「聖人は本当に、特別なサンタになったね……」
この部屋に入った時、あんなにイライラしていたのに。
今はとても穏やかで、幸せだ。
「うわ、それ思い出したの?」
参ったな、と、聖人は照れ臭そうに頭を掻いた。
参ったのはこっちだ。
初恋の思い出が、美化されたままありありとよみがえったばかり。
「ねえ聖人、今さら気付いたことがある」
「ん、何?」
「私、どうしようもないファザコンみたいだ」
父が好きだった、とても。
好きの基準がブレないように、世間や常識がどれだけ否定しても、彼がした背徳を憎めなかった。
純との一夜がそれで正当化されるわけではなく、あれは紛れもなく私の罪なのだけど。
どうして自分にあんなことが出来てしまったのか。
葛藤する苦しみだけは、少しだけ昇華された気がした。
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