YA DO RI GI

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「あほらし」 同期会のクリスマスパーティー会場を出て1人になったところで、口に出して呟けばようやく少しは気が収まるかと思った。 けど、逆にイライラが増すばかり。 悲しいとか淋しいとか、そういう感情は生まれないのが救いだった。 内定式で出会った頃には既にあの2人は付き合っていた。 学生時代から何度も別れてはよりを戻してを繰り返してきたらしい彼らが、なんだかんだ言いながらいずれは結婚するだろうというのは同期一同満場一致の見解だった。 一浪したのか留年したのか、あるいは留学か休学でもしていたのか、詳しいことは知らないが同期でありながら男はひとつ年上で。 そのせいなのかやたら物知りで大人びていて、それでいて鼻にかけることなく優しくて。 ――誰にでも、優しくて。 裏を返せばはっきりしないただの優柔不断、なのに、彼女がいるのを知っていながらその優しさにいつの間にかほだされたのは私の方だ。 一同期として。 仕事の上での良き同志であり、親友。 ずっとそのポジションで甘んじていれば、こう嫌な気分にもならずに済んでいただろうか。 たまに彼女の束縛に悲鳴を上げて逃れてくる彼が、それでも最終的にあの女から離れられないだろうことなど、最初から分かっていたはずなのに。
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