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純とは、仲の良い同期という関係を長い事続けてきた。
自分の中に育った気持ちに気が付いてからも、どうこうするつもりなどなかったのだ。
だって誰も教えてなどくれなかったけれど、頭のどこかでちゃんと理解している。
他人のモノに、手を出してはいけないと。
父は子どもの頃に、外に女を作って出て行った。
家庭を――私たちを捨てて。
中学に上がる頃に母は再婚したが、交際を始めた頃、相手はまだ前の妻子と家族関係にあった。
生みの親も育ての親も不倫不倫不倫。
誰もそれが悪い事だなんて教えてくれなかった。
それでも日本の倫理教育は大したモンで、私はちゃんとわきまえている。
他人のモノに手を出してはいけない。
浮気と不倫とはまた違うのだろうけど、いずれ他の女と結婚するだろうことが分かりきっていた純と関係を結ぶのはつまり、不倫と似たようなものだった。
それがいけないことだって、ちゃんと知っていた。
汚らわしいことだって、ちゃんと理解していた。
だからあの日、もしも純が疲れ切った顔で彼女の愚痴さえ言わなければ。
あの日もしあの場に、他にも誰かがいてくれてたら。
――ううん。
分かっていながらその行為に堕ちたのはきっと、私の血統が穢れていたからだ。
そうじゃなかったらあり得ない。
だって私は、決められたルールを破ったことなどそれまで一度もなかったのだから。
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