YA DO RI GI

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抗えないのはきっと、その血を引き継いでしまったからなのだ。 そう思えば、幾分か気持ちが楽になった。 これは私の倫理観とか道徳観の欠如によるものではない。 血のせいだ、産まれ持った、遺伝子レベルで染み付いた、本能みたいなものだ。 だから。 もし。 私たちのセックスがもっと、欲にまみれて理性の欠片もない獣じみた荒々しいものだったら。 その方がきっとよっぽど、私は苦しまなかっただろうと思うのに。 純は、誰にでも優しい人だった。 そんなことはとっくに分かっていたはずなのに、あまりにも優しく抱かれたから、愛されているような錯覚をした。 彼女に嫌気がさして逃げてきた彼を、ほんの一時癒すつもりで。 ――あわよくばそのまま、乗り換えてくれればとも確かに願った。 実際は純には私の気持ちがダダ漏れで、彼はただ、他人のモノを物欲しそうに眺める可哀相な女を慰めただけだったのに。 その優しさを憎めなかった。 だから自分のせいにして。 自己否定に疲れたら、それを血のせいにして。 そしていつからか、根本原因を作ったのは親だと。 ――憎んでいた。
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