第1章

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 ジャンプ一発、聖乙女たちを見下ろす建物の上へ飛び降りる。 「そこまでだ、ピュアレジェンズ!」 「来たわね、悪の大幹部!」  新たな敵の出現にどよめく人々、悲鳴をあげる小学生たち。カメラのフラッシュが炸裂する。  ……恥ずかしい。ああ、こっ恥ずかしい。  だがここからだと、ヨメを狙うカメラ小僧どもも良く見える。こっちに向かってしきりにブーイングする奴もいる。  ほとんど腹這いになってローアングルに構えるてめえは、ヨメのパンツを狙ってやがるな!  許さねえぞ、てめえら。流れ弾がそこへ行くからな。そのカメラ、絶対ぶっ壊してやる! 「今日こそ許さんぞ、貴様ら覚悟しろ!!」 「ちょっとあんた、どこ指さしてるの! そっちは一般人よ!」 「でね、そいつったら、ほんと憎ったらしいの! やたら強くて、そのくせ何の罪もない一般人を狙うのよ!」 「ふーん……」  一日の仕事を終え、ようやく帰り着いたマイホーム。ヨメの笑顔と手料理が出迎えてくれたが。 「今日だって、モンスターは何とか倒したけど、敵の幹部は取り逃がしちゃって……。あーもー悔しい! あいつがいる限り、またどっかでモンスターが出現しちゃう!」 「そっかぁ、大変だねえ」  ヨメはおたまを振り回し、憤慨しきりだ。  着ているものが変わっただけで夫の声を聞き分けられないヨメの、天真爛漫さというかおっちょこちょい加減を、この場合、俺は嘆くべきなのか喜ぶべきなのか。 「なのに腹立つったら! あんな卑怯者にきゃあきゃあ言ってる女の子がいるのよ! ちょっとカッコいいからって、みんな、あいつの本性がわかってない! あいつは悪の手先、みんなの敵なの!」 「うん……、わかった。お前の気持ちはわかったから、その話はもうやめにしないか?」 「え? ――あ、もしかして、あなた、ちょっと妬いてる? あたしがあいつのこと、カッコいいとか言っちゃったから。ううん、違う、全然違うの! そりゃあいつ、ちょっと背が高くて、スタイル良くて、決め台詞とか決めポーズとか華々しくて……、でも違うの! だってあいつ、悪いヤツなんだから! だから、ほんとは全然、全然カッコ良くないんだから!!」 「う、うん……、うん――」  頼む。頼む、ヨメ。そのくらいにしてくれ。  その悪役は……俺だ――。
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