第1章

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「しょうがないじゃない。 人手不足なのよ、 この業界も」  朝食の目玉焼きを作りながら、 ヨメは言った。 「あたしだってほんとは、 世代交代するべきだって思ってるもん。 でも、 後継者がいないのよ。 ほら、 近頃の子ってドライだから。 なんか得することがないと動いてくれないの。 あ、 はい、 お醤油」 「ん、 サンキュ」 「あなた、 昔から目玉焼きにはお醤油派だもんね」  新築マンションの明るいダイニングキッチン、 ヨメと差し向かいで食べる新婚さんの朝ご飯。  結婚当初は目玉焼きが炭化していたり、 味噌汁にピーマンが浮かんでいたり――しかもピーマンとしし唐を間違えていた――と、 すさまじい破壊力だったヨメの手料理も、 このところずいぶんと進歩してきた。
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