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湿気を含んだ段ボールは、地面にはりついていた。
身体を預けても傾かない小さな部屋の中、黒猫はただ丸まっていた。誰にも迷惑をかけたつもりはなかった。
「おい、捨て猫だぜ」
「ほんとだ。どうする?」
まだ幼い声の、小学生くらいだろうか。それくらいの男の声が二つ。黒猫の耳がぺたりと折れる。
給食の残飯でもくれようものなら良かったのだが、投げ込まれたのは石だった。硬い、鋭い、石コロは猫の身体に幾度となく襲い掛かる。
黒猫は逃げる体力もなかった。
死体のようにジっとして。やり過ごす。すぐ飽きるだろうと、終わりを待っていた。
少年たちは、ただただ笑っていた。
ずっと笑っていた。
やがて、陽が暮れた。凍てつく外気が傷に染みて、痛みに一人、猫は鳴いた。あの疎ましい人間の声が、忘れられなかった。
冷たい風の音が、無情にも駆け抜ける。
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