雪夜

9/9
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 出会って十五年。  コートを貸すようになって十年。  口説き初めて五年。  嫌われては……いないと思う。  毎年同じように、雪音さんは来てくれるから。  僕の言葉に、いつも嬉しそうに微笑み返してくれるから。 「……よし。  来年は『君の所へ行ってもいいかな?』にしよう。  きっと雪音さんは、一年中雪が降りしきっている北の方の高山のてっぺんにしか、常駐できないんだろうし。  雪音さんの家がある場所なら、一年中雪が降っていても誰にも迷惑かからないだろうし。  きっと雪音さんも、今度は『はい』って言ってくれる……、と、いいなぁ……」  体はしんしんと冷えていくのに、胸はドキドキせわしなく脈打っている。  このドキドキが、来年こそは雪音さんに伝わるといいのだけれど。  そんなことを思いながら、僕は雪の降りしきる空を眺めた。 《 END 》
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!