体育祭

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狼くんは睨み続ける。 律儀にも俺が何か言うのを待っているらしい。 うん。何か言ってあげなきゃ。 真摯に正面からぶつかってきた、この狼くんに。 「俺だって、好きで練習を切り上げてるんじゃないよ。」 必死でひねり出した言葉は、何の解決にもならない言葉だった。 「じゃあ、出ればいいじゃねえかよ。何でてめえが練習をすぐ切り上げんのか知りてえっつてんだよ。」 なんか、そこで信じたくなったんだ。この狼くんのことを。初めて直接、俺にぶつかってきた狼くんを信じたくなったから。 「俺、病気でさ、ドクターストップかかってんだよね。」 言ってみたんだ。本当の理由。信じてもらえないって最初から諦めないで。 でもさ、 「茶化すんじゃねえ!!くそっ。こっちは真面目にっ!?」 そうだよな、信じてもらえないよなぁ。そんなみんなに信じてもらえるような生き方してなかったもんね。どうしたら、信じてもらえるんだろ。血を吐けば、倒れるところを見せれば、信じてくれるのだろうか。 どちらにせよ、 …やっぱ期待しなきゃよかったなぁ。 自嘲の笑みを浮かべる。 そいえば狼くん、静かだな、と正面を見ると狼くんは苦虫を噛み潰した顔でこちらをみていた。 まあ、そうだね。 「いいよ、わかった。茶化してごめん。これから真面目に練習するよ。それでいいだろ。」 そう言って俺は狼くんの手を襟から外し、その場を去った。 練習で血を吐いて倒れれば、狼くんは罪悪感を持つのだろうか、と想像しながら。ザマアミロなんて呟いてみる。全部自分の虚しい妄想だと知りながら。 くそっ、なんて顔してんだよ。なんて狼くんが呟いた声は俺には届かなかった。
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