体育祭

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「へ?狼?」 え、なに、椎名先生狼なんて物騒なもん飼ってんの⁉︎ 「そうそう。狼。君をここまで運んできてくれたのも狼だよ。きっと彼、いい人そうだし。危なっかしい佐久良のことを頼んでおくよ。」 そういって椎名先生は優しく笑った。 とりあえず、骨折はしてなかったものの全身打撲が酷かったようで、3日間は入院していた。 その間、少し考えた。 誰が俺を襲ってきたのか。なぜ、襲われたのか。 まあ、大体わかってるけどさ。十中八九、毬藻側の人間だ。 でも、毬藻の綺麗なご尊顔とやらが発覚してから毬藻信者って急増したから、イマイチ犯人特定は難しい。 あとは、委員長とのデマ。 委員長は真面目に仕事してるのに、俺のせいで悪く言われてた。 もう、話したりしないほうがいいのかもしれない・・・。 しかもさ。三日間も練習でなかったら狼くんもまた俺に失望しちゃってんのかな。せっかく少しだけ分かり合えた気がしたんだけどなあ。 やっぱ、俺、誰とも幸せに過ごす権利なんてないのかもしれない。 なんて、考えたら、なんか虚しくなっちゃって。たくさん考えないといけないことはあるはずなのに、俺は考えるのを放棄した。 三日ぶりに学校に向かった。 本当はもっと安静にしないといけないって言われたんだけど、死ぬまでは俺の好きにさせてほしいっていうと椎名先生も顔を複雑そうにクシャってさせて、そっか、って許可してくれるからさ。 だから俺は今日も学校に行ける。 「おっはよー」 その声は、わかってた通り、誰からも返されることなく、異様に静かな教室に吸い込まれていく。 一瞬間をおいて、 ”杏樹様をいじめたのになんのお咎めもなかったんでしょ?” ”風紀に得意の色仕掛けしたんじゃない?” ”ていうかなんで生徒会でもないのに授業サボってんだろ” ”あれじゃん?教師にも尻尾振ってたぶらかしてんじゃねえの。” ”えー、ほんとあいつ最低だよな” とヒソヒソと俺への中傷が教室中を駆け巡る。 あー、ね。相変わらず嫌われてんね、俺。 どの噂も事実ではないけど、否定する気力も湧かない俺はそのまま席に着く。 この感じだと、机の上に落書きとか、机の中も呪いの手紙でいっぱいかなぁ、と思ったけど、予想は外れ俺の机は綺麗なままだった。
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