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「第3倉庫、第3倉庫…あった、ここだ」
玲ちゃんから受け取った鍵を差し込んで開ける。
「うわぁ、すごい量の備品だな…。」
倉庫いっぱいにダンボールとか衣装とかオブジェみたいなものまである。
でも、目的のドレスはすぐに見つかった。見つかったものの…
「え、これ、ウェディングドレスだよな…。」
真っ白でレースとリボンが使われたウェディングドレスにしか見えない立派なドレスが飾られていた。
でもしょうがない、勝つにはこれを持ってくしかないか。
汚れたらごめんなさい、と思いながらマネキンから脱がして手に持つ。…持つのも大変だ。
よっしゃ、と思いながらゴールへ駆け出していく。
委員長と約束したからね。真面目にやるって。
しかも、最後かも、だしね。
ちゃんと全力でやる。
「ゴーーール!!おっと2年A組の佐久良選手がゴールした!手に持っているのはウェディングドレスか!?そして、お題はー、ドレス!佐久良選手お題達成です!順位は…3位だーーー!」
結局、一位は取れなかったけど、第3走者で3位は健闘してるね。
3位のところでホッと一息つく。やっと終わった。
「おいっ、元会計、ちょっとこっちきてくれ」
そこにやけに息切れした爽やかくんがやってきて人気のないところまで俺の腕を引っ張って行く。
え、なになになにごと?いや、ここは冷静に
「んー?どうしたのー?」
「ちょっと協力しろ!!そのドレスを着てくれ!」
え、どしたんだ、この爽やかくんは。
「いやいや、ちょっと説明!」
普通にやだよ、ドレス着るなんて。
「ちっ、お題で"お嬢様"を引いたんだよ」
え、お嬢様??なにそれwww
誰が書いたんだよwwwww
ちなみに、この学園は男子校だから生徒にはもちろん女子はいないし、その上、教師もみんな男なのである。
そう、この学園でお嬢様なんてものは絶対に存在しないのだ。
「だからって、なんで俺がドレスを着なくちゃいけないんだよ」
「さっきそこで応援してるチアリーダーの格好したやつを連れてったけどお題に沿ってないって跳ね返されたんだ。でも、ドレスならいけるだろ。カツラならチアリーダーのやつに借りてきたから」
「いや、普通にやだよ?いやいやいや横暴すぎるー!」
そこに何故かシロもやってくる。
「今すぐ着ろ」
「いやいやなんでシロ、待ってー!」
シロまで優勝狙いなの!?
みんなマリモにガチすぎない??
わーぎゃーと騒いでるうちに爽やかくんとシロの二人がかりでドレスとカツラを被せられる。
あー、もう…。
もう俺は無になる。無になるしかない…。
そんな無になってる俺には、「か、かわいいとか思ってねえし」なんてよくわかんないことを真っ赤になりながら口走るシロのこととか、「意外と似合うな」なんて感心してる爽やかくんもまったく目に入っていなかった。
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