体育祭

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「よし、走って。ゴールするから」 なんて言って爽やかくんは駆け出して行く。でも待ってくれ、俺めっちゃ着慣れないドレスなんですけど? しかも、さっき無理して走りすぎたのだろうか。息苦しさが増している。だんだんと心臓も痛みがでてくる。 あー、そうだった。しいちゃんにもホントは止められてたんだよね。体育祭にでるの。今の身体じゃ無理だって。 とうとう動かしてた足を止めてしゃがみ込む。 あー、しいちゃんに怒られちゃうなぁ。無理しすぎだって。 でも、どうしても出たかったんだよね。 この体育祭が最後になっちゃうかもしれないからさ…。 ちくしょう、苦しい。前までこれくらい走ったってどうってことなかったのに…。 突然、自分が病気であるという事実が目の前に突きつけられて悔しくなる。 「おい、大丈夫か?」 シロが心配そうに背中をさすってくれる。 少しずつ落ち着いてくる。いつのまにか爽やかくんも戻ってきていた。 「ごめん、その格好じゃ走れないのは当然だったよね。」 そう言って、俺を姫抱きにした。 え? 「待って待って!え?なんで??」 「もう、時間がやばいんだよ!」 ああ、なるほど。もうすぐ制限時間の20分か、じゃなくて!! 「もうちょっと運び方あったでしょ!?なんでよりによって…」 「俺だってしたくてしてるわけじゃないけど、お題はお嬢様だし、俵担ぎとかにしてゴールの時難癖つけられても困るから」 いやいや、これウェディングドレスだし俺男だしお嬢様って認められるかどうか… 「ゴーーール!!おおっと?王子様がお姫様を抱っこしてやってきたーーー!!その美少女はいったい誰なんだーー??そして、お題はー、"お嬢様"!!いや、でもこれはどう見ても姫、だがしかし、このビジュアルのよさとこの環境の中でここまでのクオリティを持ってきたことに免じて、お題達成とします!!」 おお、減点は回避したのね。うん。俺の精神的苦痛を犠牲にしてね。 姫抱っこの衝撃で息苦しさも心臓の痛みもいつの間にか忘れていた。 周りはあのドレスを着ているのは誰だ、とザワザワしている。 黒いストレートのカツラにドレスを着てて、いつもの俺のイメージとかけ離れているからか全く俺とはバレていないようだった。 このままバレないようにしなきゃ俺の精神的苦痛が大きすぎる…。 「協力、助かった」 と、爽やかくんがぶっきらぼうに言う。 「ほんとだよ…」 項垂れながらそう答える。 「あんたさ、その話し方の方がいいよ。俺、あんたのいつもの語尾伸ばす話し方心底嫌いなんだよね。」 そう言ってクラスの場所に戻って行く。その途中で、「それにしても、あいつ軽すぎじゃないか…?」なんて首を傾げながらさっきまで佐久良の肩を抱きしめていた手を眺めていた。 え、てか、今俺悪口言われたよね?てか、口調崩れてた?うわー、やらかした…。
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