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メールを送った直後に歌い出す電話を環は取った。
「今どこ?」
「…んー?会社から真っ直ぐ登ってきたとこ。」
「近くには何が見える?」
「何にも見えないよ。だって山だもん。」
クスクス笑いながら環は答えると、彼はじゃあ、と切り出す。
「そこを真っ直ぐ行ったら右手に住宅街があるから、そこを抜けて突き当たりを左に曲がって橋の手前の道を左に行ったとこに公園があるから。そこにしようか?」
「えっ?何ー?左左右?」
「………。
とりあえず、突き当たって左に来てて。わかんなかったら、電話して。」
ここに住み出してある程度の年月が経つが、今だにわからない所はたくさんあった。
どう考えても通り過ぎたようで、龍二に電話した。
「ごめん…、通り過ぎたみたい。」
「いーよ、俺もう着いたから、その道まで出てくる。」
彼は大したことないとでも言うかのようだった。
途中まで迎えに来てもらい、事なきを得た。
そこには想像と違わぬ龍二が居た。
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