Olimpic

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着いた先は以前行ったところとは違うラブホテルだった。 山の中にひっそりとある。 森林を抜け、切り開いた土地に20棟ほどの部屋数を有していた。 その中の一番奥に車を停めると、彼はナンバーを隠し、玄関のドアを開けてくれた。 足を踏み込むと、センサーで部屋の明かりが灯る。 内装はフレンチモロッカン。 キリム調のアクセントラグ。 アルミ製のサイドテーブル。 プフに似たクッションを置いたラブソファ。 天蓋付きベッドには、ピンク色のオーガンジーの布が掛かり、妖しさを醸し出す。 キャンドルやランプ、置物。 ひとつひとつが可愛く、環のテンションは上がる。 「可愛い~、ここ。初めて来た。」 「そう?それなら良かった。」 彼はその様子を見て目尻を下げる。 「ん?龍ちゃんは初めてじゃないの?」 「いや…、うん。初めてではない…かな。」 言葉を濁す彼に環は拗ねたように口を尖らせた。
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