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「おいで。」
彼はそっと環の手を引くと、自分の膝に座らせる。
「…龍ちゃんの意地悪。」
「ははっ。知らなかった?俺、結構意地悪だよ?」
膝に座る彼女の細い腰に腕を回した。
「…知ってた。」
彼女は壊れものを触るかのように、そっと龍二の腕に触れる。
「ここは人が設計したもんだけど、たまちゃんに俺が作ったものを見せたいなって思って、さ。」
「…うん。すごい。この腕がこの部屋を作り出したんだね。ものづくり出来る人は凄いな。羨ましい。」
指をなぞり、ぞわぞわと甘苦しい感覚が宿る。
「何で?たまちゃんも出来んじゃね?
実は結構インテリアとか建築とか好きだろ?今からでも間に合うよ。」
「…好きだけど、あたしって器用貧乏なんだよ。何でもある程度なら出来るけど、極めることが出来ない。」
「限界を自分で決めんなよ?
俺だって諦めずに設計を希望して頑張ってたら、異動出来た。まだまだでミスとかもするし、迷惑かけまくってるけど、そうやって成長してるって信じてるんだ。
ってごめん。熱くなっちゃって…。」
彼は環の首元に頭を乗せる。
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