Olimpic

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『向上心のない奴はバカだ』 留学時代の同級生に言われた。 確かにそうだと思う。 惰性で仕事をしている人間は全体的に暗くくすんだ色をしている。 龍二は仕事に対して意欲的で、誇りを持ってやっている。 それは異動する前も同じだった。 与えられた仕事を真面目に行い、それ以上のことを自分で考え動く。 龍二を知らなくとも、上司からの評価をデータとして知っていた。 では、櫂は? 定職に就かず、ふらふらと彷徨っている。 向上心は? 誇りは? そこまでで考えることを放棄した。 きっと答えは出ない。 「何考えてんの?困らせた?」 間があったせいで、龍二は困らせたかと不安になった。 熱い男なんて流行んないか…と。 「ううん。ちょっと、留学してた頃のことを思い出してた。」 「留学してたんだ?その話聞きたい。無理にとは言わないけど。」 「うん。一年間だけの交換留学。ちょっと環境を変えたくてね。」 龍二が頷くのを見て、言葉を選び始めた。
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