Olimpic

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「あたしね、高校の時にアメリカに行っていた。 北部の名前も聞いたことがなかった州に、ひとり降り立った。 環境を変えたくてって、さっき言ったじゃん?本当にそれだけの理由なの。 さして目標があったわけでもなかった。 ただ毎日、英語と新たな環境に必至に食らいつくような日々。 日本人は珍しくて、いろんな人に声を掛けられた。 あたしは典型的な日本人だった。 NOと言えなくて、曖昧に笑って、いろんな人に遊びに誘われた。 女の子も、男の子にもね…。 たまに嫌な事を頼まれたり、されたりした。 その時に、マリアって子が声を掛けてきたの。 あたしは今、マリーって呼んでるんだけど、マリーが突然こう言ったの。 ほとんど初めて喋ったのよ? 『たまき、嫌なことは嫌ってはっきり言わないと伝わらないよ!』 マリーはすごく怒っていた。 『何しに来たの?目標は?遊びに来たわけじゃないんでしょ?』 こうも言っていた。 『向上心のない奴はバカだよ!』 頭を殴られたような衝撃だった。」
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