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結果的に、その日環と龍二は交わることをしなかった。
手を繋ぎ、キスをして、ハグをする。
留学時代の話をきっかけに、龍二も学生時代の話をしたりした。
一緒にいて、言葉や時間を共有する。
少しの触れ合いで、心は満たされる。
「出来なかったね…。あたしがいっぱい話しちゃったから。」
「いーよ。楽しい話いっぱい聞けたし。」
「…ふふっ。あたしも楽しかった。
ありがとう。」
本当はまだ一緒にいたかった。
彼女に聞きたいこともあった。
でも、彼女の無邪気な顔を見ていると、今日はまだ良いと思う。
自動清算機で支払いを済ませ来た道を戻ると、彼女を降ろす。
最後にあの曲のように、彼女にキスを落とした。
甘く、柔らかく、いとも簡単に自分を堕落させる環を愛おしく思った。
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