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今日も受付業務が落ち着き、中休憩を取ると、ふたりは噂話に興じていた。
「…そういえば、龍二、年内に結婚らしいよ~。」
思わず反応しそうになったのを、いつものポーカーフェイスでやり過ごした。
「えっ?そうなんですか?この前何にも言ってませんでしたよね?」
環の気持ちを代弁するかのように、亜美が弥生に問う。
「うん、あいつ、わざと黙ってたんじゃない?
私に言ったらすぐに広まるとでも思ってるんでしょ。」
ケラケラ笑いながら言うふたりの話の続きは耳に入らなかった。
思っていたよりも衝撃が凄い。
ショックだった。
胸がギュッと押されるような痛み。
頭が割れそうな感覚。
「おはようございます。」
声をかけられ、環は一足先に業務に戻る。
休憩と言っても、座りっぱなしの身体を解したり、トイレに行く程度で受付からは離れられない。
きちんとした休憩の時は交代で取るようにしている。
白のブラウスと紺の制服には名札がつけられ、ひとつに纏めた髪と貼り付けられた笑顔で椅子に座った。
「あれ?山田さん、顔色悪くない?大丈夫?」
名前も思い出せない社員に心配されてしまった。
「ちょっと寝不足でして。すみません。大丈夫です。」
笑顔で返した。
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