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龍二に腕を引かれ、ベッドの上で環は彼の膝に乗るように向き合う体勢となる。
視線がぶつかると、羞恥心が沸くのを表に出さないように環は堪えた。
木々のざわめきを窓越しに聞き、どちらからともなく唇をそっと重ねた。
それは数秒、離れるとまた近付く。
頬や耳、瞼にも落とされるキスはくすぐったさをも感じさせる。
顔を離しては、見つめ合った。
環はクスクスと笑い、釣られるように龍二もフッと笑みをこぼした。
環が思い描くセフレとは全く違う。
恋人同士とも違う。
ゆっくりとシャツのミルク色のボタンを一つ一つ外し、龍二の素肌に触れた。
「少し疲れてる?」
「いや、異動になって、まだちょっと慣れないだけ。」
疲れは纏うモノからのものではなく、龍二の顔から見て取れた。
ふたりの会社は状況とその人の能力により、不定期だが4月と9月に人事異動がある。
中途採用や、新卒採用も不定期だった。
設計も出来る龍二は、施工部から兼ねてより希望していた設計部に一日付で異動になっていた。
大学で学んでいる頃から施工にも興味があり、それは彼にとって大きな糧となった。
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