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「家族が好きなのかな…。
俺の両親ってすごく仲良くて、コッチがやきもきするぐらい。
家を継げとかそんなことは一言も言わなくて、なのに、兄貴は自分なりに家族を守りたかったんだと思う。
嫁姑の問題もあるだろうし、田舎だから色んな付き合いもある。
そんな空気が嫌で俺は逃げたんだ。なのに完全に離れることも出来なくて、わざわざ近くに家まで探して。」
環にならすんなり話せた。
未沙にも話したことなどなかった。
「そこが龍ちゃんの素敵なとこなんだよ。否定せず、認めることが出来る。そんなん出来る大人なんてあまりいないんだから。」
にっこりと笑って彼女は言った。
あとは、取り止めもない会社の話を少しだけして「帰ろっか?」と部屋を後にし。
環の頭を優しく撫で、精一杯の優しい口づけを落とす。
呆気ないほどにあっさりとしたさよなら。
次の約束はない。
いつも言うのは「バイバイ」だけ。
これが最後になるかもしれない、名残惜しくはあったが、ドアをそっと閉めた。
外は真っ暗で、木々が風に吹かれ、夏の終わりの気配がした。
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