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今日、龍二の纏うモノの濁りはほとんど消えていた。
環と触れ合い薄れはするものの、次に会う時にはまた濁っていた彼のソレの変化に環は驚いた。
消えれば良いと思っていた。
だが実際に消えると自分の存在価値がなくなるのではないかと畏怖したのだ。
しかも、その濁りを消しかけているのが、龍二の恋人であることにも嫉妬を覚えた。
自分へ向けるモノも少し薄れているような気がした。
今までも自分を好いていた人にその感情がなくなる経験は幾度かあった。
環が酷く傷付いたのは、好意的だったモノが一気に憎悪や嫌悪に変わった時だった。
ドロリとした醜悪なモノ。
そんなモノを自分へ向けられるのが怖かった。
龍二に同じようなモノを向けられるなんて想像したくなかった。
もしくは、ぽっかりと自分への想いがなくなることが怖かった。
好きの反対は嫌いじゃなく無関心と良く言うが、好きの反対は嫌いもしくは無関心、両方なのだ。
本当の意味での嫌われることは、その空気を向け、自分の精神エネルギーをも痛める。
無関心になることは、何にもなくなる。
自分が何を言っても、何をしても、相手には何にも響かないし、何も産まれない。
その人の前ではただの無力な子供になるのと同等だった。
虫の声が聞こえてくるのを感じながら、ひとり眠った。
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