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ズザザザ…
「ぐっ…くっ!!」
おお! すごいんだな!
変態さん、おでの全力の蹴りに耐えたんだな! 本当に強いんだな、変態にしとくのは勿体無いないんだな!
「わんわんわん!」
犬が心配そうに駆け寄っていって来ようとするのを変態さんは、『待て』をかけて制止するんだな…なんかカッコいい…おでの兄ちゃんみたいなんだな。
でも…もう変態さんに関わってる場合じゃないんだな。
「あ! 何処へ行く!?」
おでは、変態さんに背を向けて全速力で駆け出したんだな!
なにか…何かがおかしいんだな!
お蟹ちゃん…
おでは、登ってきた崖を飛びおりて、いつもの獣道を駆け抜けて、とにかく沢に住んでる蟹さんのところに走るんだな!
「……ウホッ…?」
走って、走って、やっとの思いで沢についたおでが見たのは、あまりに酷い光景だったんだな…。
まだ青い柿すら取り尽された丸裸の柿木。
その周りに横たわる、甲羅の潰れた蟹さんたち…
「え て きち…」
ボロボロの柿木の下、ひときわ大きな蟹が折れたハサミをぷるぷるてるんだな! 『蟹さん』ココの『長』なんだな!!
「ウホッツ!! ウホオオオ!!」
蟹さん!! 蟹さぁん!!
酷い! 酷いんだな…甲羅が割れてミソ出てるんだな…!
「えて きち…」
「ウホッ! ウホホホ!」
「聞くのだ この沢を襲ったのは _______だ…がっ、奴等の本当の狙い は____ブクブク」
あああ! 蟹さん! もう喋っちゃダメなんだな! 泡がぶくぶくなんだな!!
「 も 時間が えて お蟹を______」
ぷるぷるしてたハサミが、力なく地面におちたんだな…だめ! だめ、なんだな!
「ウホオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
蟹さん! 蟹さん!
蟹さんは良い蟹だったんだな!
群れの皆から『化け物』って呼ばれてたおでの事『蟹にとっては大きくても小さくても猿は猿だ』って、いってよくしてくれたんだな!
誰が、誰がこんな事したんだな!
許せない! 許せないんだなぁあああああああああああ!!
「エテ吉」
大声で泣いてたら、後ろの方から名前を呼ばれたんだな。
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