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「ウホッ…!」
振り向いたら、ボロボロになった柿の木の前に兄ちゃんがつもの優しい顔で笑って立ってるんだな…。
「また、泣いてるのか? ホント、エテ吉は泣き虫小僧なんだなぁ」
「ウボッ…ウホッ、ウホォォォ!!」
「うん、うん、ホント…兄ちゃんもびっくりなんだな」
足元で動かなくなっていた少し小さめの蟹をひょいって拾った兄ちゃんが、残念そうにいうんだな。
「ウホッ! ウホッウホッツ~~~」
這うように駆け寄ったおでの頭を兄ちゃんが優しくなでてくれるんだな…兄ちゃんの手はとてもあんし_____
「ホント、お前がまだ無事だ何て計算外なんだな」
兄ちゃんの声が急に冷たくなって、撫でてたおでの頭の毛を思い切り掴んだんだな? え? え?
「ダメ! 逃げてエテ吉っさあぁん!!」
草むらから甲羅に包帯をまいた小ぶりな蟹が、慌てて飛び出して大声をあげたんだな。
? お蟹ちゃ_______ゴガッ ビキビキ!
「ゴフッ!?」
気がついたら、おでは顔面を地面にぶつけてたんだな!
にぃ 兄ちゃん…?
「兄ちゃんな、ホントはお前の事が死ぬほど嫌いなんだな…お前がウチに来てから本当にいい事がないんだな」
兄ちゃんは、見上げようとしたおでの頭を足でふんずけて手にもってた死んじゃった小さい蟹をぐしゃって握りつぶしたんだな。
はっ? へ?
まさか、兄ちゃんがお蟹ちゃん達をこんな目に?
おでは、立ち上がろうとするけど踏まれた頭が動かせないんだな! 変なんだな! 兄ちゃんにこんな筋力ある訳無いんだな!!
兄ちゃんは、おでとは違って『普通の猿』の筈なんだな!
でも、でも、それよりもっ…
「ウホッ…ウホ…」
兄ちゃん、おでの事嫌いだったんだな…。
おで、頭わるいけど、分かってたんだな…おでと兄ちゃんがホントの兄弟じゃないってこと。
それどころか、おでが普通の猿じゃないってことも。
けれど、兄ちゃんはおでの事『弟』って言って、群れの皆に虐められても真っ先に助けてくれて大食いなおでにいっぱい食わせようって餌集めで足りない分は仕事もして…
だから、おで、おで、大きくなったら兄ちゃんの役に立つようになりたいって!
今日だって、初めて仕事を任されて嬉しかったんだな_____。
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