あなたなしではいられない

2/32
前へ
/32ページ
次へ
◆・◇・◆  街がクリスマス色で染まる頃。 行き先を伏せられたまま、亜里は汐の運転で連れ出された。 路面店沿いまでやってくると、一つの店の扉を汐に開かれる。 「……カルティエ」 「亜里が憧れだって言ってたデザインの指輪、見せてもらおう」  亜里のサイズは七号。 指輪のデザインによっては八号。 基本、偶数サイズは置いてあることがないのに、ここにはある。  亜里がサイズ直しの不要な八号を試させてもらうと、汐が即決した。 「俺に、はめさせて」 「ダメだよ、こんなに高い物を……」 「いいから。左手出して?」  汐はこんなことを、自ら進んでやってのける人ではないはずだ。 女性からねだられたならば、指輪だって贈ってきただろうと、亜里は思う。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加