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◆・◇・◆
街がクリスマス色で染まる頃。
行き先を伏せられたまま、亜里は汐の運転で連れ出された。
路面店沿いまでやってくると、一つの店の扉を汐に開かれる。
「……カルティエ」
「亜里が憧れだって言ってたデザインの指輪、見せてもらおう」
亜里のサイズは七号。
指輪のデザインによっては八号。
基本、偶数サイズは置いてあることがないのに、ここにはある。
亜里がサイズ直しの不要な八号を試させてもらうと、汐が即決した。
「俺に、はめさせて」
「ダメだよ、こんなに高い物を……」
「いいから。左手出して?」
汐はこんなことを、自ら進んでやってのける人ではないはずだ。
女性からねだられたならば、指輪だって贈ってきただろうと、亜里は思う。
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