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部屋の中心にいたのは、うんざりする程に見知った自分の彼氏……ではなく、驚いたようにこちらを顧みる一人の見知らぬ女性。
長いウェーブ掛かった艶やかなブロンドの髪。
綺麗に揃えられた前髪の下から覗く、ぱっちり二重の魅惑的な瞳が、一直線に私を捉える。
一枚で十分様になる上品な色使いのベロアワンピースが、とてもよく似合っていて……。
一瞬どころか数秒見とれてしまってから、ハッとして。
慌てて頭を下げた。
「ご、ごめんなさい!部屋間違えました!!」
すごすごと彼女に背を向け、元来た廊下を戻っていく。
……やばい、私。
働きすぎで、とうとうボケてきちゃったんだ。
くらくらする頭を押さえながら、今脱いだばかりのブーツに再度足を通し、重たい玄関戸を押し開ける。
再び野外に追いやられた体で振り返り、もう一度壁面に貼り付けられたその部屋ナンバーを確認してから……。
また違う意味で、固まった。
そこに表記された三桁の数字は、紛れもなく自身の家のもので。
……やっぱり間違いなんかじゃない。
ここ、私の家だ。
っていうかさ。
私さっき、自分で鍵開けてたよね?
そうとわかった途端に、今度はサーっと青ざめていく。
っ、じゃあ……今の人、誰っ!?
まさかあいつが、とうとう女まで作って私の家に連れ込んだか!?
その可能性が色濃くなった瞬間、今までの疲労は一気に吹っ飛び、怒りで脳内が充満していった。
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