第1章

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ユウくんの甘ったれた台詞が脳内に侵入してきて、息がしづらい程に苛ついてくる。 そしてそのイライラが、私の口を止まらなくさせる。 「面接行ってるだけで何がストレス?落ちたから何?もう失業して一年経つのに、立ち仕事が嫌だとか外回りがしんどいとか……いつまでも選り好みしてるから落ちるんだよ!!もっとどんな仕事でもやるくらいの気持ちで……」 「っせーな!!なに?説教かよ。自分は室内の一般職で、ぬくぬくと働いてるくせに。俺にはこの寒空の下、ガチガチに震える警備員でもやれって?」 私の必死の訴えに、聞く耳も持ってくれないユウくんに、倍増する悲しさ。 ぐっと唇を噛んだ瞬間、続いて放たれたユウくんの台詞が、私の我慢の袋をとうとう引き裂いてしまった。 「あー、あれだ?お前のお気に入りの服、俺のが似合ってたから僻んでんだ?だってそうだろ?お前、俺とも気づかずに見とれてたもんな。」 ついさっき見せてしまった私の反応を、鼻で笑うように言い落とされて。 私を中傷する言葉の数々に、自分の中でギリギリ堪えていたものが、呆気なく崩れ落ちていく。 普段の私なら、ムカッとしながらも「はいはい」で流せるのに……。 今の私は、もう駄目だった。 「……別れる。」 今まで何度も口に出そうとして、思い止まってきたフレーズが、唇から溢れ落ちる。
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