第1章

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「別れるって言ってんの!!今すぐ出てってよ!!」 今日まで溜めに溜めてきた感情を、すべて吐き出すように声を張り上げると、すっと高くなる目の前の影。 そのまま無言で私の横を通過して、背後で開閉するリビング戸。 その数秒後――重たい玄関扉が、激しく揺れる音がした。 「………………。」 私の主張に反論もせずに、あっさりと出ていったユウくんに、目の前が蒼然とする。 「っ、はは。」 口から漏れる、乾いた笑い。 こんなに毎日働いて働いて……ユウくんと一緒にいるために身を削ってきたのにさ。 別れたくないの一言もなく、私の前から姿を消すんだ。 崩れ落ちるように、その場にしゃがみこんで……頬を濡らす冷たい涙。 ……よかったじゃん。 大きいお荷物がいなくなって。 もう、二人分頑張らなくていい。 もう、ユウくんは……ここにいない。 この切羽詰まった生活からも、働かないユウくんを見るたびに感じていたストレスからも、やっと解放される。 ……解放されるのに、なんで。 こんなに涙が溢れるんだろう? 私、大友ミサ(おおともミサ)。28歳。 三年間つきあった甲斐性なしの彼氏と――クリスマスイブ前夜に、とうとう別れました。
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