一、 少年の特筆すべきでもない通常

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 ここまでのあらすじ。ボスは普通にやっても倒せない。 「くそっ、やつを倒す術は……私たちにはないというのか!」 「……いや、一つだけある」  エミリアが敵の攻撃をさばきつつ歯噛みする。そんなエミリアに、俺はゆっくりと答える。 「なんだと!?」 「煌、それは本当なのか!?」  仲間たちが俺に声をかけてくる。それに俺は静かに答える。 「ああ、俺がこいつを使えばいいのさ」  懐から取り出したのは、少し前の大決戦で手に入れた伝説のアイテム的なもの(説明は省略)。それを見た仲間たちの表情が変わる。 「お前、それは……!」 「正気か、煌!」  解説。これを使ったらボスを殺せるが、俺も死ぬ。ちなみに俺にしか使えない。説明は割愛。 「コウ! 貴様……」 「あー、何も言うなエミリア。これしか手段はないんだよ」 「でも、それじゃお前が……」 「大丈夫だ、俺は死なない」  これは事実だ。ただし、俺にとっては、だが。  ボスの猛攻で、仲間たちにも疲労が見えつつある。頃合いか。 「じゃあ、行ってくる」 「コウ!」  悲痛な表情のエミリアに、俺は笑顔を向ける。 「エミリア、お前に会えてよかった。縁があったら、また会おう」  それだけ言い残すと、俺は誰にも追いつけない速度でボスへ突っ込んでいく。エミリアの悲痛な叫びすらも置き去りにして。ボスの眼前、敵が怯んでいる隙にアイテムを発動。そして渾身の必殺技を―――――叩き込む! 『ぐああああ、貴様、貴様あああああ!!』 「うるせえ、さっさと死ね」  崩れ落ちていく肉体。俺は吐き捨てる。 『我は死なぬ! こんなところでは……』 「死ぬんだよ、これはそういう物語だ」  視界が暗くなっていく。 「じゃあな、一人で地獄へ行け。俺は『次』にいく。行きたくもないがな」  その言葉とともに、世界が消失した。  そして、俺は今回も死んだ。くそったれ。
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