二、 いつも通りのリスタート

3/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 ……さて、親切な解説タイムだ。といっても、単純に言えば一言に尽きる。つまるところあれだ、この頃流行のループものってやつだよ。  俺は、もう何度も何度も死に、そのたびにこの朝からやり直している。確か今回で百十三回目の四月七日か? そろそろ数えるのも面倒になってきた。  加えて解説。俺はどうやら『主人公体質』らしい。うっかりすると何かの物語に巻き込まれる。で、だいたい世界を救うべきポジションになる。後天的にか生来のものかは、巻き込まれる物語による。さっきのループでは魂がどうとかいってたから後者か? でも魂云々ってのが、今までのループの後遺症かもしれないしな。  で、だ。主人公になると俺は死ぬ。確実に死ぬ。クライマックスに死ぬ。世界を救ったり、ラスボス倒したり、大切な人を復活させたりして、死ぬ。死ぬ。死ぬ。もうなんか笑えるくらい死ぬ。どうやら俺は早死に属性を持ってる主人公らしい。  気づいたのはいつだっただろうか。  初めはよかった。自分が何度もこんなことを繰り返すなんて思ってないから、全力で打ち込めた。本当に、世界のことを、仲間のことを、何より愛する人のことを思って戦えた。真剣に苦悩し、命を奪う罪深さにおびえ、仲間との友情を確かめ合い、愛する人に巡り合えたことに感謝し、友人との死別に涙し、そして最後は満足して死んでいった。  最初の三十回くらいまでか、目的があって生きていけたのは。初回で死んだ俺は、この朝に戻り、そのことに気づいてこう思った。神というものがいるなら、これは神からの贈り物だと。俺はこの機会を使い、初回で救えなかった人々を救うべきなのだと。繰り返した。繰り返した。一人でも多く救うために。少しでも効率よく生きるために。決して誰も泣くことのないように。  そしてそれは成功した。俺以外の誰も死ぬことなく、俺は完璧にやり遂げた。最終的に俺は死んだが、みんなのためだと思い、今までにないくらいの笑顔で逝けた。これですべて終わったのだと、何の根拠もなく信じて逝った。  だが、俺は性懲りもなく四月七日の朝に目覚めた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!