英雄症候群《ヒーローシンドローム》

プロローグに似た独白

　人間だれしもそれぞれの人生の主人公、って言葉があるな。あれについてどう思う？　好きか？　嫌いか？　ちなみに俺は嫌いだ。大嫌いだ。虫唾が走る。滅んでしまえ。

　俺は主人公になんかなりたくない。考えてみろ、主人公ってのはつまり一番活躍するってことだろ。そんな面倒なことがあるか。主人公になりたいなんて馬鹿げている。俺は誰かの人生の脇役になりたいんだ。

　俺の言うことが理解できるか？　理解できない？　まぁそうだろう。誰だって主人公になりたいと望んでいる。他の誰でもない、特別になりたいと欲している。何者かになろうとしている。だが実際、なってみるとそう楽しいものでもないぞ。

　俺の言ってることがまだ分からないか。まぁいいだろう。これから語る俺の話を聞けば、否が応でも知ることになるさ。俺が主人公をやりたくないという理由と、脇役を望む理由が。

　回りくどい？　じゃあ本編に入る前に、もったいぶってかっこつけずに、端的に言ってやろう。

　飽きた。

　俺はもう、主人公なんか、飽き飽きだ。