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次の日、ハロのもとに訪れたのは教皇だった。
「おお、毒の作用で肌の色が変化してしまったとは聞いていたが……」
拾ってきたペットと久しぶりに対面した彼は、
色白だった少年が、こんがりと日に焼けたような褐色の肌をしているのを見て、にやりと笑う。
「綺麗なものではないか、なかなか良く似合っている」
彼はそう言って、胸のポケットから、金色の輪がついた一本の鍵を放り投げた。
こつん、と頭にぶつかって落ちたそれを拾い上げ、少年はその場に立ち尽くす。
「ハロ、自分が何をすれば良いか解るか?」
問いかけても黙り込んだままのハロに、教皇は続けて、淡々とした言葉を投げかける。
「いつも来ていた女なら、もう来ないぞ。倒れたところはお前も見ていただろう。あの後、あれはマルドゥク神に召された」
教皇は彼女の『死』を簡単に説明し、天を見上げて微笑む。
そこには汚れた天井が見えるだけであったが、彼はもっと遠くを見つめていた。
「最期の床で、お前が代わりに私のために働くと言っていた」
教皇は少年に歩み寄ると、
品定めするように睨みつけてくる翡翠色の瞳を、むしろこちらから覗き込むようにして、彼の目の前に立つ。
「私物は全てお前に譲られた。あとで案内してやろう。部屋も、服も、必要があるなら調教用器具のコレクションも、好きに使うといい……、うむ、不服そうな顔だな」
そんなものは要らないという顔つきで、ハロは黙り込んでいた。
しかし、別に泣き出す様子もなく、これと言って怒っているふうでもない。
ただ、沈黙を守っているその姿に、
まだ若き教皇は膝を着き、自分の方が目下について、優しく説明してやった。
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