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「甘えてないで、生きるんだよ」
私の行為と言葉に、びっくりしたように固まって、目を大きく見開いている、少年。
その身体には、既に、あの獣と同じにおいが染み付いている。
この毒の香りが、
私に、彼に、
そして私の敬愛する教皇さまにとって、
どれだけの価値を持っているんだろう。
「きみにどんな辛いことがあったのか知らないけれど……、神さまはね、その人に乗り越えられない試練を、与えたりしないものなんだって」
私が彼に縋りつくようにしてその身体を求めたので、
少年は緊張して、黙ったまま鼓動を高鳴らせていた。
だけど、拒否はされなかった。
彼はただ不思議そうに首を傾げ、
褐色の斑点だらけになった私の不気味な身体が、自分を抱く行為を受け入れていた。
「……教皇さまが、教えてくれるんだ」
汗ばんだ額に、歪んだ眉。
訝しげに私を見つめる、澄んだ翡翠色の瞳には、
確かに、生命の力が満ちている。
「マルドゥク信仰は、今は異端とされているけれど、きっとこれから、世界中に広まってゆく」
生きるために、生きる。
マルドゥク神の教えには、
必ず、救われる人がいるから。
「お願い、きみも手伝って……」
ーー私たちはこの日、
初めて一緒に食事を摂った。
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