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「だから言っただろ?狼の魂は蝶に身を変えるって。おいら、嘘はつかないよ」
リランは笑った。
「母さん、シルバー。逢いに来てくれてありがとう」
蝶に身を変えたシルバーとレイラは一筋の光となり、満天の星空へと消えていった。
木々の中に隠れるように生活していたジュダが群れの中に入り、リランに言った。
「家族のリーダーはこの俺だ。お前に噛まれた咬創が未だに疼くが、闘っても負ける気はしない。やるか?」
リランは笑みを浮かべ、安堵の涙を流した。群れにいる誰よりも父ジュダを尊敬していたのはリランなのだ。
「よかった。父さん。いつもの父さんだ」
ノントはジュダに歩み寄り、仰向けになった。
「おいら、父さんに忠実だよ。こんなにいい子はいないよ。おいら、美味しいご飯が食べたいな」
「調子のいい奴だな、お前は」ジュダは苦笑いする。「腹を見せる暇があるなら、狩りに行くぞ」
ジュダは遠吠えをし、狩りの合図を出した。
「今日は鹿を仕留める!腹いっぱい食うぞ」
狩りをする群れは深夜の森林を駆け抜け、獲物を求めた。ジュダは走りながら夜空を見上げる。
蝶になった愛する妻と息子よ、いつまでも群れを見守っていてくれ。
俺の命が尽きるその時、再びお前たちに逢えるだろう。
その日まで誇り高く生きぬかねば。
俺の体に流れる血は鮮紅色の誇り。
そして、小さなアルファのシルバーに流れる血も鮮紅色の誇りだ。
銀色の蝶になったシルバーは、大好きなお母さんと天国で家族を見守り続けた。
ねえ、お母さん、僕ね、お父さんに褒められたんだよ。僕は一匹狼のアルファなんだ。ずっとお母さんを守ってあげるね――――
完
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最後まで読んで頂き感謝します。ありがとうございました!
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