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成体の兄妹達は野兎の肉を幼い子供達に与えた。お腹が空いていたシルバーも無我夢中で貪るように胃袋へと収めていった。お腹一杯ではないが、なんとか飢えを凌げた幼い子供達は、ジュダを見る。子供達の目は無言で“お母さんはどこ?”と尋ねているようだった。
狩りに出かけ、レイラの死を目の前にしてしまったノントはむせび泣く。他の子供達も同様だったが、リランだけは涙を堪えていた。
俯いてレイラの死を告げるジュダの口元は震えていた。
「か、母さんは、崖から落ちて死んでしまったんだ。きっと蝶々になって、いつまでもお前たちを見守ってくれる……。だから、皆で頑張ろう……」
幼い子供達も、ここに留まった成体の子供も大声で泣いた。受け入れがたい真実に胸が張り裂けそうだった。
「お母さんが僕を残して死ぬわけないもん!崖から落ちたんだよ。今頃痛くて泣いてるよ!どうしておいてきちゃっの?お父さんのバカー!お父さんは狩りに行く前、お母さんを虐めたもん!お母さんが嫌いだからおいてきたんだー!」シルバーは泣きながら言った。「お母さーん、お母さーん!」レイラを恋しがり、何度も呼び続けた。
ノントがシルバーを宥める。
「言いすぎだよ。父さんは母さんを誰よりも愛していたんだ。そんなこと言っちゃだめだよ」
「お母さん!いやだよぉ」
レイラと同じオッドアイの瞳に号泣され、罵倒されて、居た堪れない気持ちになり、ジュダは耳を下げて群れから距離を置いた。
まるでレイラに罵倒されているように思えた……。
私を愛していなかったのね……。
そう言われている気さえした。
「違うんだレイラ。俺は君を愛して……」
ジュダはレイラと愛を交わした木々の中で、潸然と涙を流した。
シルバーはジュダの背中が僅かに震えているのを見て、ジュダのそばに歩を進めた。そして、ジュダに話し掛けた。
「お父さん、さっきは言い過ぎてごめんなさい」
ジュダは涙に濡れた瞳でシルバーを見る。「いいんだ。父さんは母さんに酷いことを言った」少し間を置いた。「でもな……でも、本心じゃないんだ。父さんは、母さんが大好きで……もし、ここに母さんがいたなら、愛してると伝えたい」
「お父さん……」
「シルバーすまない」
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