アニマルファンタジー【短編】

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 半べそで訴える。  「お腹空いたよぉ。お母さんとお父さんに逢いたい」  蝶は心配しているかのようにシルバーの頬に擦り寄った。 □□□  その頃、ジュダの群れは飢えに苦しんでいた。  リーダーであるアルファのジュダは愛する妻レイラを亡くしたショックと、追い打ちをかけるように突然消えてしまった可愛い息子シルバーを想い、悄然としていた。アルファに君臨する狼は、いかなる時も気丈に振る舞い、群れのリーダーでなくてはならない。しかし、今のジュダはリーダーとして失格だった。  ベーターの息子リランは怒りをあらわにした。「父さん!幼い兄妹達を飢え死にさせるおつもりですか!?いくら悔やんでも母さんは返ってこない!」悲しみの表情を浮かべ、軽く俯いた。「そして、シルバーも」  「……。俺は不甲斐ない奴だ。お前に俺の苦しみは分からんだろう」  「プライドをも捨ててしまったのですか?」  リランは意を決し、リーダーであるジュダの肩に噛みついた。ジュダの肩から、じんわりと血が滲んだ。  「な、なにをする!」  鼻に皺を寄せるリラン。  「あなたはもうリーダーじゃない。群れを飢え死にさせるわけにはいかない。これからはオレがリーダーだ」  声を震わせるジュダ。  「お、俺を群れから追い出すつもりなのか?」  「いいえ」リランは怒りの表情を開放し、哀れみの表情を浮かべた。「父さん、あなたの血は鮮紅色の誇りではなくなってしまったようです」    「……。リラン」  リランは大声を張って、群れ全体に言った。  「今日から俺がリーダーだ!文句のある奴はいるか!」  ノントがジュダを見てからリランに歩み寄り、仰向けになった。  「おいら、美味しいご飯が食べれたらそれでいいの。リランを慕うよ。だって、おいらは、か弱い狼」  ジュダは耳と尾を下げ、木々の中に入っていった。去りゆくジュダの後姿を眺め、リアンが言った。  「父さん、あなたは強く偉大な狼だったはず。なぜ……。残された家族より亡き母が大切なのか」  ノントが言った。  「母さんが死んじゃったあの日、母さんに酷い事を言っちゃったから、今でも悔やんでるんだよ。シルバーもどっかに行っちゃったし……。生きてるのか、死んでるのか分からないけど。おいら、心配」
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